四十六

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四十六

 抱きついて寝ていたグルがモゾモゾ動き、目が覚める。 「……どこかいくの、グルさん?」   「あ、起こしちゃったか……ごめん。二人が起きる前に、朝飯でも作ろうかなって思って」   「でしたら、私もお手伝いします」  グルのアイテムバッグから、きのうみんなからもらった食べ物と、唐揚げとカツを取りだした。 「果物は切って、唐揚げとカツはフライパンで焼けばいいかな?」 「はい。パンがあれば挟んでサンドイッチにするのも、いいと思います」  「そ、そうだな……」 「…………?」  夜明けともにグルは精霊獣の姿から、いつもの黒髪とグリーンの瞳に戻っていて――彼の魔法で変化していているエルモも、いまは同じ髪と瞳の色だ。 「エルモが俺とお揃い……嬉しいけど、その瞳で見られると照れるな」   「えへへ、そうですね」  二人はなぜか照れでしてしまう。  それをそばで寝っ転がりながら見ていた、グレは大ため息を吐く。   「……お前らはどこにいとも、初々しいなぁ。新婚だから仕方ねぇか――うらやましい!」  ――新婚? 「まだ婚約だ!」 「まだ婚約です」 「いや、二人のその雰囲気は、結婚したといってもかわらねぇ」  頷き、なっとくしながら話すグレ。 (グレちゃんがそう言ってくれるのは嬉しい。いつかはグルさんのお嫁さんになりたいもの) 「エルモと結婚か――ゴタゴタが終わって村にかえったら、すぐにエルモと結婚式を挙げたい。二人で採取に出かけて、旅行にいきたい……美味しいものを食べて、古本屋巡り、きれいな花も見たい。行ったことがない海がみたい」 「海? いいですね。私もグルさんと色んなところを見てまわりたいです。あ、グレちゃんも一緒にね!」  令嬢のときは王妃教育のため――王都と屋敷の往復だったから旅行なんて行ったことがない。自由になったのだから、いろんな国を見てまわりたいわ。  そのためにはバイト頑張らなくっちゃ。 「……ほんと、いい子に出会ったな俺達」 「そうだな。幸せにしたいし、一生たいせつにする」 「してやれよ。そしてぜったいに離すなよ!」 「トウッ!」と、グルに飛びつきじゃれるグレ。  仲のよい兄弟をみて、エルモはほっこりした。 「グル、エルモちゃん。そのためにはシルワ様が言っていた毒草を消すぞ!」 「「おう!」」  ちかくの街に移動して荷馬車を一週間借りた。まだファーレズ国の国境近く――王都までは荷馬車で急いでも三日、四日はかかるだろう。  荷馬車の上で地図を広げたグル。 「王都までけっこう遠いな……俺が精霊獣のままか、ファーレズ国の王都に行ったことがあれば、転移魔法が使えたんだけど…… 。こればかりは仕方がないな」  と、荷馬車を動かした。 「グルさんのおかげで、ファーレズ国まですぐに来れたわ。本当ならいくつも国を越えなくてはならなかったから、一週間以上はかかっていたわ」 「夜通し走ってくれたグルのおかげだ。怪我なく移動しようぜ――弱々アルベルトから「リリアの手紙」と「リリアからの招待状」を盗んだんだし、ニシシ」  招待状?  いつのまに? 「だな、王城にその招待状で怪しまれずはいれる、ニシシ」  グレとグルは悪い笑顔をみせた。
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