四十九

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四十九

 究極の選択――グルは悩み抜いたすえ、リリアに会うことにした。決めては「アイツにエルモを合わせたくない」となったのだ。 「兄貴、俺から離れるなよ」 「わかってる、頼りにしてるぞグル」 「わ、私もグレちゃんを守ります」 「エルモちゃん〜ありがとう。でも、無理しちゃダメだからね。怪我なんかしたらグルが泣いちゃうから」 「はい、無茶はしません」  王都にはいるには門で、騎士に軽い審査と通行料を払えばいい。王都の門番はグルとエルモ――二人分の通行料しかとらなかった。ということは、グレの姿は見えていないということになる。  だって、門を通るときグレは、グルとエルモの間に座っていた。まあ、白トラをみた門番が驚かなかったからよかったかも。  ――みえていたら、今ごろ大騒ぎだったわ。 「ハァ、初めからわかっていたが。グル、かけはオレの勝ち。門番の奴ら、オレの姿が見えていなかったな……このファーレズ国に住む人たちは魔力が低く、力がないのか?」  そのグレの問いに、グルはコクリと頷き。 「クソッ、かけに負けた。――人のなかで魔力が高いものが昔よりもいないのか。うーん。それなら、すんなり行くかもな」  グルとグレは周りの人たちを見て、魔力がどうとか二人で話している。話し終えて、二人はエルモをみて首を傾げた。 「兄貴。エルモはファーレズ国出身だけど、ここらの奴より魔力が高いよな。そして、いまはシルワ様のケンゾクになって最強になったし」  ――最強? 「そうだな、最強だ。エルモちゃんを怒らせると、街全体をふっとばかすかもな」  ――私ってそんなに凄いの?  エルモは二人の話に瞳をパチクリさせた。    王都の石畳を進み、グルが宿屋の看板をみつけて。 「昼過ぎて、もう夕方だ。目的地の王都に入ったし、今日は宿屋に泊まろう。ここ毎日、水魔法だけの風呂じゃ、エルモが可哀想だ」 「いいね、オレも風呂にゆっくり浸かりたい」 「私も、賛成です!」  門では他国から来ている者たちを調べるためなのか、どの国の通貨も通ったけど。王都のなかの宿屋はファーレズ国の通貨ギレが必要となった。宿屋の人に聞くと、換金は冒険者ギルドでできるらしく、グルのギルドカードが役に立つ。  荷馬車を宿屋に預けて、中央にある冒険者ギルドにみんなで向かった。ファーレズ国のギルドはグルがいく、サーティーアのギルドよりも大きいらしく、珍しそうに周りを見ている。 「人が多いな。グレ、エルモ、俺から離れるなよ」 「うん、すごい人だね」 「ほんと、いろんな国の人が集まっている。なあ、グル、エルモちゃん、どんなクエストがあるか"クエストボード"をみにいこうぜ」  グレはエルモに抱っこされながら騒ぐ。たくさんの冒険者たちが行き交うギルド、グルのローブを離したら迷子になりそうだ。 「ギレに換金が終わったらな」 「やったぁ、楽しみ!」  ギルドの受付にいきサーティーアの"カン"から、ファーレズの"ギレ"に換金した。三人でもっとも人が集まるクエストボードをながめる。 「この凄いぞ、サーティーアの言語でも書いてある」 「ほんとうだ、読める」  フフ、二人とも子供のようにみてる。そう、サーティーア国とファーレズ国はかなり離れているため――言語が違ったのだ。ファーレズの国境、荷馬車を借りるとき、王都の門番、宿屋の話、ギルドなどで話したのは――この国で生まれたエルモ。 「エルモはすごいな、出会った頃からサーティーア言語を普通に話していたよな。あと何カ国話せるんだ?」 「そうね。あと二カ国くらいかな?」 「へぇ、凄いな……」  婚約者になってから王妃教育で習った。ほんとうなら、もう一カ国習うはずだっだ。しかし、エルドラッドがリリアと仲良くなってから、邪魔をされて王妃教育を受けれなかったのだ。    当時――王城に言語を習っていた伯爵夫人に会いにいくと。 『カーシア伯爵夫人には帰ってもらった。今日からお前は王妃教育を受けなくてもいい』  と、言われてしまった。  殿下に言われるまえに、サーティーア国の言語をマスターできていたから、グル、グレ、みんなと会話できたのだ。  ーーその言語のことで。    エルモたちは大変なミスを起こしていることに、気付いてていなかった。
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