五十

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五十

 クエストボードにポーションの納品と、薬草の採取のクエストがあった。数もグルが持っているので足りると言うことで、クエストを受けてすぐに納品した。  報酬をうけて戻ってきたグルは驚いている。どうしてか話を聞くと、ポーション、薬草のクエスの報酬が。サーティーア国より、ファーレズ国の方がより高いということだった。 「報酬が高くてびっくりした――今晩の夕飯が豪華になるぞ」 「ヤッタァ!」   「わーい。なに食べます? お肉のサンドイッチ、ピザ、スパゲッティ?」 「どれもいいなぁ!」  みんなで話し合ってお肉のサンドイッチと、揚げ鳥を買って宿屋に戻った。夕食も終わり、お風呂も済ませて作戦会議をはじめた。 「二人ともファーレズ国の言葉が話せないから、私がアルベルトになります!」  と、言うと。  グルとグレは目をまん丸にした。 「ダメだ、危ない!」   「グルさんとグレちゃんと一緒に行くのだから危なくないわ。それに城の中は私がよく知っているもの」 「そうだけど……」   「ここはエルモちゃんに頼もう。オレ達は初めていく場所だから迷うよりはいい」  グレの意見は正しいけど――グルが悩んでいる。  しばらく悩み、まだ迷っているという瞳で。 「エルモに頼るしかない……頼む、俺から離れないでくれ」  ――明日の作戦は決まった。    ☆    明日に備えて、宿屋でまったりしていた。  エルモは言語の話をしていて、ひとつ気になることがあった。それは"精霊の森"について――ゲームではヒロインとヒーローが幼い頃、白トラと出会ったところだ。 (ヒロインと白トラはゲームでは念話というのかな? 心の中で普通に会話をしていた)  ――でも、ヒロインとグレちゃんでは言語が違う。  殿下とリリアはファーレズ国の出身で。この国の王子が用事もないのにサーティーア国にくるはずもない。でも、グルに連れて行ってもらった森は――ゲーム画面でみた"精霊の森"そのものだった。  だから、私は勘違いしていた。今回のことがなかったらファーレズにまず来ることはないから、そのままでも別に問題はなかった。  ――きてしまったから、気になった。 「ねえ、グルさん。この世界に精霊の森って、いくつもあったりする?」  寝る準備を始めていたグルにきいた。 「ん、あるぞ。精霊が住んでいる森は"ほとんど"精霊の森と呼ぶ」 「え!」  これは、初耳。 「だいたい森の入り口には目印に白い花と、黄色い花が植えている。なかにはシルワ様のような大精霊がすむ森もいくつかある。精霊にいきたい森の花、薬草などの植物を持って入れば、その土地の精霊が「いらっしゃい」と向かい入れてくれる……まあ、精霊だけが使える、転移魔法のようなものだな」 「そうなんだ」  とても、便利だわ――違う国でも森と森で、精霊たちは繋がっているのね。 「オレは子供のときからそれ使い。いろんな森に行って、いろんな国の精霊と話すことが好きだった。言葉も。精霊同士の言葉があるから、その土地の言語を覚える必要なかったんだ」   「精霊語か――」 「そうそう」  グレはそれでファーレズにきてケガをして、ヒロインに助けてもらったのね。 「なんだ、使ってみたいのか? エルモもシルワ様のケンゾクだから行きたい森の花を持って、精霊の森と呼ばれている森にいけば、その土地の精霊が向かいいれてくれるぞ」 「ええ、そうなの?」 「それに帰りに体験できるぞ。シルワ様から帰りに使うチェリチタの花を貰っているから……それさえあれば、一瞬でサーティーアの精霊の森に帰れる」  え。 「だとしたら。行きもそうすればファーレズまで、一瞬だったんじゃない?」  この問いに二人は黙る。  何かいけないことを聞いてしまったの?  焦るエルモに。 「うーん。それがな、他の精霊にきいたところ……兄貴のことがあった後から。この辺の森に住んでいた精霊達がみんな、よその森に移ってしまったんだって」 「うん、うん。いまファーレズ国に精霊はいないみたい」 「せ、精霊がいない?」 「ああ。ギルドで、ポーションと薬草の報酬がよかったろ?」  コクリと、うなずくと。 「いま、ファーレズ国では薬草と、ポーションを作るときに必要な薬草が育たないんだってさ」  ――グルとグレに衝撃的なはなしをきいた。
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