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五十一
寝ようと、ダブルベッドに横になると寝る前に、グレが一言言った。
「みんな忘れていない? オレの姿は人に見えないから、王城に一人でも行けたよね」
だって、これにグルはすぐに言い返した。
「わかってたよ。でも、兄貴を一人で行かせたくなかった。まれに見える人もいるかもしれないし。あの子が見えたりするかも」
「あ、それは忘れてた。でもさ、グルならそう言ってくれると思ったよ」
「もう、みんなで行くんです。はやく寝ますよ!」
「「はーい!」」
はやく終わらせて、みんなで家に帰りたい。
グルとエルモ、ベッドの上にグレが一つのベッドで眠る。王都に来たからかもしれない……この夜、エルモは嫌な夢をみていた。
『エルドラッド様、お待たせいたしました……』
一人でいるはずのエルドラッドの隣には、リリアがいた。二人は楽しげに話をしている。
エルドラッド様はまた、リリアさんと一緒だわ。でも、ここで文句を言ってはダメ、彼の機嫌が悪くなって……今日の歴史の教育中、ずっと文句をいわれる。
こんな気持ち。早く、私の心からなくなればいいのに。辛いのは嫌なの……ルモ……あ、誰かが私を呼んでいるわ。
「エルモ、嫌な夢をみているのか……俺がそばで守ってやる」
――この声はグルさんだ。
私の大好きな人……夢か本当かわからないけど、彼にくっつきたくて彼の胸元に潜り込むと、優しく抱きしめてくれた。
温かくて、安心する……。嫌いなエルドラッドは消えて、グルさんでいっぱいで、ぐっすり眠れた。
グルは隣でいや夢をみて唸るエルモに声をかけた。目を覚ましたのかわからないけど、俺の名前を呼んで、くっついてきた彼女を抱きしめて眠った。
――いや夢も見させないと。
あれから嫌な夢をみずぐっすり眠れた。先に起きていたグルとグレに挨拶をして、朝食は昨日の残りを温めて済ませた。
宿屋を後にして荷馬車の後ろで、王城に行く前にグルの魔法でアルベルトに変わる。服はグルのを借りた……グルの香りがする服はいいのだけど。
――男性の体は……女性の私からして、すごく、変な感じだった。
(この違和感、二度と男性にはなりたくないわ……)
「エルモ、話を合わせる。兄貴は俺が見つけてことにする。そして、俺はアルベルトの知り合いな」
「はい、わかりました……じゃなかった。わかった、グル」
「その声で呼ばれたくないな……これが終わっても俺のこと、グルって呼んでくれると嬉しい」
わかったよと、声にはださずに頷いた。
荷馬車の後ろに転移魔法陣を描き、城からずくに出れるようにした。
王城の門でリリアの手紙を見せ、城の中に入る。
「行くぞ、みんな危ないと思ったら逃げる」
「「はい!」」
門番から連絡がいき、リリアの側近がエルモたちを迎えにきた。来た人は初めてみる人で、かなりのイケメンだった。
彼は丁寧に頭を下げ。
「リリア様の部屋まで、案内させていただきます」
懐かしく、かわらない王城のなかを側近の後についていく。ついて先は――エルモの部屋になる予定の部屋だった。それもそのはず彼女は王太子妃となり、やがて王妃になるのだ。
側近は扉をノックすると、なかから返事が返ってくる。この声はリリアだ。側近に扉を開けてもらい、頭からローブのフードを深く被ったグルと一緒にはいる。
え?
度肝を抜く、驚きの事態――彼女がリリア?
可憐で、可愛らしい見た目だった彼女はふくよかになり。ソファーで紅茶とケーキを、執事姿のイケメンに食べさせてもらっていたのだ。
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