最終話

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最終話

 ファーレズ国から戻って一ヶ月が経つ。  エルモはパン屋のバイト、グルの採取の手伝い、村の復興……目まぐるしく毎日が過ぎていった。  いちど、バイトの帰りにアルベルトを見かけたけど、彼はグルとエルモに気付き足速に逃げていった。 「ケッ、根性のない奴だな」 (よかった、アルベルトも近寄ってこなさそうね……ひと安心)      それから月日が経ち、グルとの結婚式。  この日のために。グルが準備してくれた真っ白なウェディングドレスを身に付け。グルはおそろいの、真っ白なタキシードを身につけた。 「綺麗だ、エルモ」 「素敵だよ、グル」 「みんなのところに、いこうか」 「はい」  シルフ村の入り口からチェリチタの木まで。  様々な花びらがまかれたバージンロードを、グルにエスコートされて歩くと。  村のみんなから「おめでとう」「嫁さん泣かすなよ」「子供たくさん作れよ!」など、お祝いの言葉がとんだ。 「ありがとうございます」 「まったく、好き放題に言いやがって……ありがとう!」 「フフ、嬉しい」 「俺も嬉しい」  チェリチタの木の前で待つのは、神父役の大精霊のシルワ様。  彼はグルとエルモに微笑み。 「今日という日を迎えられて嬉しく思う。グル、エルモ、結婚おめでとう。二人とも末長くお幸せにね」 「「はい!」」  嬉しそうなグルと鼻を擦り合わせて、誓いのキスをすると、みんなからのお祝いの花びらが舞った。    形式にそった結婚式とは違い、私達らしい結婚式ーーということで。ケーキ入刀ではなく二人の共同作業として、村のみんなとシルワ様の大好物の唐揚げ、カツを揚げることにした。  なんだか、満月の宴と変わらないけど。    花びらが舞う、ステキな結婚式の場を作ってくれたお礼と、これから"よろしく"のいみも含めたのだ。みんなは喜び、笑い、踊り、私達の結婚式を盛りあげてくれる。  乾杯の音頭はばっちゃん……すでに酒盛りがはじまっていてお酒に酔ってるけど。 「この日が来ると、二人が出会った日にワシは思っとった。グル、エルモちゃん、結婚おめでとう。仲良くするじゃぞ。困った事があったら聞きに来るんじゃ、乾杯!」 「ありがとう、ばっちゃん」 「ありがとうございます」  お酒をふるまい、一通り揚げ物も終わり。  一息ついていた。  そこに。 「結婚おめでとう。グル、エルモちゃん、残った唐揚げちょうだい」  真っ赤な顔をした、グレが千鳥足で近寄ってくる。   「グ、グレちゃん、飲みすぎだよ」 「そうだぞ、兄貴」   「グフフ。今日ぐらい許せ、弟と弟嫁チャン。あ、でも、二人は飲みすぎちゃだめだぞ……いまから初夜があるから」  ケラケラ、愉快に笑う。 「……はぁ? まったく。兄貴は酔うと下品だな」 「本当のことだろう?」 「そうだけど……ところで、兄貴はシルワ様に力を戻してもらったのに……いつまで、小さいままなんだ?」  そう。いつまでも小さい白トラのままのグレ。彼もグルと同じ、人型にもなれるはずなのになろうとしない。  そのことをグルに聞かれた、グレは照れ臭そうに。 「だってさ。チタが、この姿がいいって言うから……」 「チタちゃんが?」 「ハハハッ、それなら仕方がないな……ほら、彼女が兄貴を一人で待ってるぞ」 「おう。グル、エルモちゃん唐揚げありがとう、幸せになれよ! オレもなっ!」  一ヶ月前。グレは番とお別れをしたあと……チタと付き合いはじめたのだ。毎日、楽しそうにチタちゃんの話をするのだ。 「兄貴が幸せそうでなにより」 「うん、幸せそうだね」 「俺達も負けずに幸せになろうな」 「はい、なりましょう」  グルは頷き。 「さて、俺たちは家に帰るか」  大きな声でいうと、いきなりお姫様抱っこした。そのグルの行動に気付いた村の人達、グレ、チタ、シルワの温かな目線。 「グル……」 「いいじゃん。はやく、エルモと二人きりになりたい……嫌なのか?」  うっ、嫌じゃない。  むしろ嬉しい。 「嫌じゃないよ。私も、グルと二人きりになりたい」  頬に熱を感じながら"そっ"と耳元で囁くと、彼の目尻がさがり嬉しそうに笑った。        
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