天使キエルと悪魔ローラの最悪な出会い

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天使キエルと悪魔ローラの最悪な出会い

天使と悪魔……両方が住む世界。魔天界。 そこでは天使も悪魔も平等に暮らしていた。 が、それをよしとしないモノもいた。 現在の魔天界を治める王……は現在、不在のために娘の天使『キエル・ファンタジア』が代わりに王の代理を行っていた。 しかし、彼女を王と呼ぶにはあまりにも残酷な女だった。 整った顔立ち。洗練された肉体美。卓越した頭脳。頭の中心に浮いている輪っかは耀き。そして純白の羽は全てを包み込む。 魔天界誕生以来の逸材と呼ばれていた。 性格以外は。 そこに新たな部下、悪魔『ローラ・マルキフ』が配属になった。 配属になった理由はキエルのボディーガードとしての役目だった。  そう。キエル姫殿下(きでんか)の元に殺害予告が届いたのだ。 『お前の誕生日パーティの日にお前を殺す』 予告状には書いてあった。 城中はパニックに陥ったが、キエルは一人、冷静だった。 「この送り主は文章が下手だな。私が直すなら」 と、殺害予告状に添削を始めた。 『お前の誕生日パーティに血の恐怖が待っているであろう。殺されるのはもちろん……キエル、お前だ!!! キエルだけに、消えるのだ!!!』 「全く、殺害予告なんだからこれくらい書かないか」 「あの、キエル様、お客様がお目見えになっております」 「ん、犯人か? 予告通りに来れない奴だな」 「いえ、ボディーガードの方だそうです」 「ボデーガードだぁ?」  キエルが入り口に目を向けると額に怒りマークを今にも浮かべそうな短い黒髪に黒スーツに身を包んだ、背が高く頭には悪魔の印である黒い角と黒い翼を持っていた。 「いかにも、悪魔って感じだな。黒に黒に黒とは最近の悪魔はもう少しオシャレだぞ」 「失礼ですが、こちらが本当にキエル様で有らせられるのでしょうか? 早くも胃に穴が空きそうなのですが」 「失礼な悪魔だな。クビにするぞ」 「まあまあ、キエル様。こちら、ボディーガードをなさって下さる方ですから」 部下のメイド天使がキエルをなだめるも疑いの目は続いていた。 「頼りになるのか、こいつ?」 「魔天界の王はこんなにも悪魔をお嫌いですか?」 「おいおい、私様(わたくしさま)は悪魔も天使も愛してるわよ。 だから、王様やってんだよ。それで、貴女、お名前は?」 「ローラ・マルキフです」 「ふむふむ。ローラちゃんね。さっきはあんなこと言ったけど中々に私好みなんだよね」 「光栄ですが、私がキエル様にそのような感情を抱くことはまず、間違いなく、100%ございませんので安心してください」 ローラはすでにボディーガードの任務から降りたくなっていた。
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