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自由奔放
ローラのボディーガード任務が始まったが、キエルの自由奔放ぶりに驚きを超えて呆れていた。
「キエル様。何をやってらっしゃるのですか?」
「見てわからんか? トランプタワーだ」
「それはなんのトランプですか?」
「部下たちの身分証」
ローラは羽で風を起こしトランプタワーを崩すと自分の身分証を拾い上げた。
「もう少しで完成するところだったんだぞ!」
「部下たちの身分証でなにを完成させようとしてるんですか! 通りで今朝から部下の人たちが慌ててたわけだ」
「身分証タワーは私様がいかに部下に守られているかを戒めるためにやっていた神聖なる儀式だ。ボディーガードならタワーを守れ」
「キエル様は守りますが、身分証タワーは守る命令を受けていませんし、私のも含まれていたのが腹立ちます。一体いつの間にこんなことを……」
「ローラはボディーガードなのに、ボディーがガード出来てないぞ。まずは自分の身を守れるようになってから、その職を名乗るんだな」
キエルはソファーに深く座り込むと、身分証をローラの前でひらひらと動かした。
「なッ!?」
ローラは慌てて懐を探した。
懐には身分証がしっかりと入っていた。
「おいおい、こんなのに引っ掛かってちゃ、私様を守れないぞ?」
キエルは身分証をひっくり返し、それが、別の部下のものであるのを見せつけた。
「……!」
ニヤついているキエルに対して、ローラは自分の情けなさと手のひらで遊ばれている感覚に怒りと恥ずかしさで顔が赤くなった。
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