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傍から見たら俺もこいつも、きっとこの夏空が似合う人種じゃない。でも互いに、ここに居るしかない。
「授業中の教室に入ったときさ、どんな反応されるかわかる?」
むくりと頭を上げた七瀬は、ぎこちなく首を傾げた。
「揃ってこっちを見るくせに、目が合うと逸らされる。やべぇ、って顔で。……だからここで授業終わるの待ってんの」
「先輩、コワイですもん」
「そーらしいな」
派手な髪が悪いのか、着崩した制服がダメなのか。1年の時から何かにつけては絡まれ、それに応えているうちに、周囲からは一線を置かれるようになった。
3年になったことで拳から生傷が消えても、見えない一線は、消えもしない。
ただ俺には、学校を一歩出れば友人達がいる。同じ服装を強制されることもないし、足並みを揃える必要もない。
――でも七瀬は、どうやら違うらしい。
「先輩は……一匹狼みたいで、かっこいいです」
さっきはコワイと呟いておいて、どの口が言ってんだか。
一匹狼といえば聞こえは良いが、要ははぐれ狼だ。脅威の度合いだけなら、群れている周りのヤツ等がよっぽど狼らしい。
「お前の場合は“孤高”ってやつだな。そのコミュ障さえ治せば、ただの“高嶺の花”になれんのに」
ペットボトルを手放して視線を戻すと、本来なら人受けしそうな顔が、まじまじとこちらを見ていた。
「なにその顔」
「先輩がそんな言葉知ってるなんて……意外で」
こいつの発言はちょいちょい癇に障る。でもそれが素なら、3回に1回くらいは聞き流すしかない。
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