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「あ……目は」
「閉じない派」
ある意味では新鮮な、1歳児でもできるようなキスに、ため息を返す。
「全く興奮しない。これ、少しでも勃ってるように見える?」
入れ替わりで視線を落とした七瀬は、あろうことか、輪郭を確かめるようにファスナーラインを撫で上げた。
「――ッく」
「あっ、すみません……」
恥ずかしそうに顔を逸した小悪魔ヤローの手を引き、足の上へ座らせる。百歩譲って全てが無意識だったとしても、これはこいつの自業自得だ。
「俺の周りには色んなヤツがいるし、偏見はねぇよ。でもおまえに抱かれたいとは微塵も思わない。だから、黙って抱かれとけ」
「――ッ、や――です」
奪い損ねた唇が焦れったく歪む。
「なんで」
「ここ、暑いもん」
潤んだ瞳を見て、また同じことを思った。
――どう考えても、抱かれるのはおまえだよ。
「んじゃどこ行く? トイレ?」
「サイテーです」
「もうここでいい」
逃げられないように頭を引き寄せ、半ばムリヤリに唇を開かせる。捩じ込んだ舌を受け入れ始めたのも束の間、肩の上で緩んでいた七瀬の手に力が戻った。
「せんぱ――ッ、ま――」
「今度はなに? 俺は抱かれる気ないし、煽ったのはおまえ。お喋りはこれが最後な」
「もちょっと喋れ――いった、のに」
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