春−3

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春−3

多分、転入生騒動ぐらいの話。 ◇◇◇ 「先輩……なんか、物凄く疲れてません?」 「そうですねー……」 今日も今日とて図書室で先輩と二人、カウンターに座ってのんびり過ごしている。とても暖かくて、宿題なんてしたくない。こういう日に限って多いとか本当にやめてほしい。 現実を逃避しつつ先輩の言葉を待つ。言いたくないなら流しても大丈夫ですよー、って雰囲気も出しておく。できる後輩を装ってみた。 「言いにくいわけじゃないんですよ。幼馴染の二人が困ったもので、少々頭を抱えてるんです」 「幼馴染ですか」 「はい。一つしか違わないんですけど、かわいいんですよ」 そう言う先輩は、優しい顔をしている。大事に思ってるんだな。廊下で会う顔と全く違うことに気付くぐらいなら、私でもできる。 「その二人が、自分達で何でも解決しようとするんです。ドツボにハマるというのに」 「……寂しいですね」 「そう……ですね。さみしい。寂しいみたいです」 すっごい、しょんぼりしてる。あの、いつもにこやかな先輩を、ここまでさせるとは……! どんな幼馴染なんたろう。ちょっと気になる。 少しは寂しさを紛らわせれるといいなと、表情筋が鈍いなりに笑って話す。 「困った事を解決する為に、外堀を埋めておけばいいんですよ! きっと! たぶん!」 ぐっと、ペンを持ってない方の片腕でガッツポーズを作る。 一瞬ぽかんとして、次に浮かべたのはイケナイ事を思いついた悪い微笑みだった。 「いいですね。それ。外堀埋めましょう。後、3分の1を急ピッチでやってしまいます」 「外堀埋めまくってるじゃないですかっ……!」 「大事なので、埋めますよ。そりゃぁ」 「先輩に埋められる幼馴染さんドンマイです」 どういう意味ですか、と頬をつっつかれる。楽しそうなので、されるがままにしておく。 「では。思い立ったら吉日なので、俺は行くね。問三引っ掛けだから気をつけて」 「どうしてわかったんです!?」 一瞬しかノート見えてなかったはずなのに。 「俺も、そこでひっかかったから」 「先輩でもひっかかるんですね」 「俺をなんだと思ってるんですか……。やらないと出来るようになるわけ無いじゃないですか」 それもそうか、と頷く。最初からできる人はそうそういない……はず。この先輩は努力の人なのかもしれない。 外堀頑張って埋めてきますと宣言し、吹っ切れたように振り返らず図書室を出ていった。 カウンターの上にはレモン味の飴が一つ。 この前のお返しだろうか? 幼馴染さんの話も気になるし先輩が来てくれるのを待ってみようかな。
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