春ー4

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春ー4

続・転入生騒動のあたり。 ◇◇◇ 放課後、私はいつものように人の気配がない図書室のカウンターに座っている。あいにくの雨で部屋全体が薄暗い。 がらっ。 扉があいたので反射的に顔を向ける。 「沙智。お疲れ様。そろそろ時間かしら?」 今日も美人さんの友人である栞がやってきた。一緒に帰る約束をしていたのだ。 「うん。帰ろー」 「えぇ。……先輩はいらっしゃらないのね」 栞はきょろきょろと見まわして、先輩の姿を探す。 「そう。あれから来ないんだよね。大丈夫かな」 「先輩なら大丈夫じゃないかしら?」 「うん……外堀埋めるって言ってた」 幼馴染のために頑張るって。一生懸命な先輩ならきっと何とかしてくれるんだろうな。幼馴染がちょっと羨ましい。……羨ましい? 何て考えていたら栞が話だした。 「外堀ね。埋め終わったら、また来るんじゃないかしら。授業には出てるみたいだし」 「授業受けてるの?」 「廊下で周りが騒いでたのを見たわ」 「ふーん……」 「姿見れなかったからって拗ねないの」 頬をつんつんしてくる。 「むー」 「はいはい。今日はおとなしく帰りましょう」 私だって一目見たかった。 早く、帰ってこないかな。
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