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その一月は銀幕。
雪に覆われた地面に交差する足跡。
子供、大人と忙しなく不定型に繰り返されるその足跡は、新しい雪に瞬時に掻き消されていく。
冬も半ばの街を多くの人が通り過ぎ、人知れず消えていく。
そんな刹那に、胸が苦しくなった。
ひらひらと粉雪が舞い散った。
肌を刺す空気は冷たく、君の白い肌をほのかに赤く染めていく。
そんな時に、僕と君は街の雑踏へ消えていく。
足跡と痕跡を粉雪に吹き消されながら。
その一瞬の煌めきが、胸を苦しく締め付ける。
その一瞬の甘美が、頬をほのかに赤くする。
誰も知らない銀幕の刹那、僕と君の唇が重なった。
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