⑦お父さんといっしょ

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 伊藤家お食事会恒例の『セッション』。母の世代で流行った曲だったから、母とセッションをすると『赤いスイートピー』を必ず演奏する。それを拓人が覚えて、ついに唄えるように。遥ママのピアノ、寿々花のクラリネット、拓人の唄。いつしかこのセッションが伊藤家団欒の象徴だった。だから拓人が結婚式で唄ってくれた。  披露宴余興の時も、六歳の男の子がお祖母ちゃん世代で流行った曲をしっかりと唄い、音大出身である母のピアノと、現役の音楽隊隊員である堂島陸曹がフルートで伴奏をしてくれたため、会場は聞き入ってくれ、最後には拍手が会場全体から鳴り響いたほどだった。  将馬にはそれが忘れられない祝いと思い出となったから、お気に入りの曲になった。ドライブで必ず聴く。  それを今日も披露してくれると将馬も笑顔になった。    だが、今日はそれだけではない。 「ぼくもピアノ、弾くからね」 『え?』  またもやパパと秘密のお父さんが、揃って目を見開いた。  さあ。たっくん。ピアノも頑張りましょうか。  寿々花もクラリネットの箱を開け、拓人と目配せ、準備を始めた。
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