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伊藤家お食事会恒例の『セッション』。母の世代で流行った曲だったから、母とセッションをすると『赤いスイートピー』を必ず演奏する。それを拓人が覚えて、ついに唄えるように。遥ママのピアノ、寿々花のクラリネット、拓人の唄。いつしかこのセッションが伊藤家団欒の象徴だった。だから拓人が結婚式で唄ってくれた。
披露宴余興の時も、六歳の男の子がお祖母ちゃん世代で流行った曲をしっかりと唄い、音大出身である母のピアノと、現役の音楽隊隊員である堂島陸曹がフルートで伴奏をしてくれたため、会場は聞き入ってくれ、最後には拍手が会場全体から鳴り響いたほどだった。
将馬にはそれが忘れられない祝いと思い出となったから、お気に入りの曲になった。ドライブで必ず聴く。
それを今日も披露してくれると将馬も笑顔になった。
だが、今日はそれだけではない。
「ぼくもピアノ、弾くからね」
『え?』
またもやパパと秘密のお父さんが、揃って目を見開いた。
さあ。たっくん。ピアノも頑張りましょうか。
寿々花もクラリネットの箱を開け、拓人と目配せ、準備を始めた。
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