⑯神様、激怒😡

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 戻ると、千歳が観念したと思ったのか、母子が目を輝かせ勝ち誇った笑みで待っていた。 「えー、バッグを持っていないじゃんー」  メリィのがっかりした声に、千歳を睨む伯母の紹子。だが千歳は菓子が散らばったままのテーブルの上に置き、箱をひとつふたつと開いた。  どちらも祖母が千歳に譲ってくれたり、贈ってくれたもの。  ひとつは、ブルーパールが連なるネックレス。朋重が千歳にはパールが似合っていたと言ってくれた時につけていたものだ。  もうひとつは、大粒のブラックパールとダイヤがあしらわれた指輪。  それを見たふたりが目を輝かせた。 「こちらなら、どうぞ」  すぐに二人の手が伸びてきた。乱暴に箱ごと取り去り、卑しい笑みを口元に浮かべ、ギラついた目でしげしげ眺めている。 「ふん。ありがとね。これからも、よろしく」 「ママ、私、ネックレスがいい」  開かれていたジュエリーの箱をパチンと閉めて、さっとバッグにしまった。  それもなんなく見過ごした千歳を見て、朋重が吃驚し詰め寄ってくる。 「千歳! それはお祖母様からいただいたものだろ。絶対に駄目だ!」  バッグに高級パールのアクセサリーを仕舞い込んだ母子が、そそくさとリビングを出て行った。 「千歳、いくらなんでも。一度でも物を渡したら、次も絶対に来るぞ」  だが千歳はにっこり微笑む。 「来ない来ない。これで最後。これでもう、私と朋重さんだけがゆっくりできる家に元通りよ」 「はあ? でも、伯母と従姉は、事故にも遭わずここまで来てしまったじゃないか」  だが千歳は不気味な笑みを朋重に余裕で見せてみた。
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