5118人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうでしたか……。ですが、もう二十年も前のことで、話も決着しているはずなのです。ほぼ絶縁状態でしたから、婚姻には関係ないものと判断してしまいました。荻野のお家に迷惑をかけることとなってしまい申し開きができません。お祖母様もお聞きになったらお怒りでしょう。信用をなくされたかと思います」
朋重の兄もすかさず頭を下げてくる。
「お祖母様からの贈り物だった真珠のジュエリーを手渡されてしまったとか。おなじ物などふたつとないもの、必ず取り返します。申し訳ありませんでした」
だが、千歳はにっこりと清々しく微笑んでみせる。あまりにも千歳が怒ってもいない、落ち込んでもいない、怯えても泣いてもいないので、義父と義兄はきょとんとした顔を揃えていた。
「大丈夫です。我が家には加護がありますので、お義父様もお義兄様も、当家が『不思議な一族』と言われている所以を体験していただけたらと思っています」
お二人が顔を見合わせる。朋重も『ちーちゃん、どうしたの』と戸惑っていた。
だが千歳は真顔にもどって、義父と義兄を見据えた。
「ご存じなのでしょう。荻野の家は不思議な家。親族になると一緒に繁栄するとお聞きになられたことがあるかと」
だから次男を見合いに出したとは、さすがに義父も言い難いようで黙っていた。
そこに、もう幾分か荻野の家風に慣れてきた朋重が会話に割って入ってくる。
「もしかして。あの真珠を持たせたことで、なにかご加護でも?」
このような騒ぎになって、千歳はここでもういいかなと、夫と親族になる男性ふたりに打ち明ける。
「荻野は長子相続。でも、もうひとつ、跡取り長子には『とある現象』が起きます」
最初のコメントを投稿しよう!