⑰荻野リーサルウェポン

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 朋重の次は、義兄の秀重がしっくりしてきたという表情に和らいだ。 「父さん、海にいる神ということは。うちが祀っている保食神と属性が似ているのでは。七福神の恵比寿は釣り竿を持っているだろう。もともと海の神だ」 「そうだ。保食神(うけもちのかみ)も漁業守護、航海安全と食の神だ。なるほど。どことなく繋がっている気がする……」  そこまで気がついた義父と義兄が、千歳をしげしげと見つめてくる。 「だから、私の息子と縁があったと?」 「不思議だな。朋重が最初のデートで漁村に連れて行って漁船に乗せたと聞いた時も、もっと女性が喜ぶお洒落なデートをと父さんと怒ったけれど……。もしかして、それも導かれて? そう思えてくる」 「ほんとうだな。しかも、二人揃ってプロポーズしようと決めた場所が、漁村の祠が見える海上で漁船だったというのもなあ」  いま思い返せば、導かれてなるべくして繋がったと思えると、お二人が唸り始めていた。  千歳と朋重も顔を見合わせて微笑み合う。 「私にとっては、あの漁村で船に乗ったことが決め手でしたから」 「俺も。あの海上で祠を見つけた千歳さんが手を合わせてくれたことが、ずっと残っていたから」  親族顔合わせの食事会で、二人がどうして惹かれ合ったか、プロポーズの経緯なども報告済み。  荻野の家族は『なるほどねえ』とほのぼの聞いてくれたが、浦和の家族は『え、意外なシチュエーション。荻野のお嬢様にそんなプロポーズ? え、お嬢様からも漁船でプロポーズしようとしてた?』と、青ざめたり驚いたりと、対照的だったことを思い出す。  ともなれば、今夜の千歳の余裕も腑に落ちたと、義父も義兄も納得してくれる。
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