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「不思議なご加護がきっとありますから。慌てず様子見をしてみましょう。ポイントは『祖母から譲り受けた、あるいは贈られた、真珠』ということです」
「お祖母様の贈り物だから、なにかあると言いたいのか千歳は」
朋重の慣れた問いだったが、今度は義兄の秀重も遠慮なく聞いてくる。
「千歳さんに神様が付いているなら、荻野会長、お祖母様にも付いているということですよね。あ、お父様にも」
「はい。祖母の神様のことを、弟は『荻野のリーサルウェポン』と呼んでいます」
リーサルウェポン!?
最終兵器という意味で捉えてくれただろう栗毛の父子たちが、そろっておののいた。
そんな祖母の強力な神様はというと――。
「祖母の神様は、縁結びの神様のようです」
「縁結び、なんだ。あ! もしかして、お祖母様が漁師姿の俺の写真を見ても、お見合いを勧めてくれたのって」
「そう。海の神同士で相性が良さそうと、祖母は素直に勘で選んでいたんだと思うの。いいご縁だったでしょう」
「強い縁結びができる神様なのか。それなら、荻野製菓が繁栄するにあたっても、いい縁を選んでこられたということか。でもそれがリーサルウェポン?」
浦和の義父が『羨ましいな。いい縁が選べる見通しができるなんていいな』なんて、本当に羨ましそうにぼやいたのが聞こえた。そこには妻とはいい縁だったが、妻の父親が手に取った悪縁だけがどうしても切れないと嘆いているのも伝わってくる。
だから千歳はそんな義父にも、不敵ににんまり微笑んでみせる。
「大丈夫ですよ。お義父様。いい縁結びの神は、いい縁切りもしてくれるんです。強力な縁切りをです。でも気をつけなくてはいけないことがあるんです」
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