⑰荻野リーサルウェポン

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「うーん。福神さまが『真珠を持たせろ』とおっしゃるからそうしたの。特に黒真珠の指輪は、お祖母様から受け継いだというよりかは、曾々祖母様から代々引き継いできたものだから、強力なお守りだと聞いていたんだけど。お祖母様の力ではなくて、荻野の加護の象徴というか」  またまた朋重を始め、浦和の義父と義兄が飛び上がるほどに仰天している。 「そ、そんな代々のお宝みたいなものを、渡してしまったんだ。良かったのかよ、千歳」 「あああ……。もう、駄目だ……。そんな貴重な黒真珠なんて、取り返しがつかない……」 「父さん、しっかり。だから、きちんと紹子伯母さんから取り上げるように、俺たちも頑張らないと」  もう気絶しそうなほど脱力しているハンサムなお父さんを、息子ふたりが『しっかりして』と慌てふためいていて支えたりして、どうしようもない。 「ですから。大丈夫ですって。絶対に、真珠から帰ってきますから。お義父様、お義兄様、余計な手出しは無用です。効果がでるまで静かに待ちましょう。たとえ一年後であっても、取り返しに行かないでくださいね。お二人まで巻き込まれてしまいますから、遠巻きにして過ごしてください。お願いいたします」  また、栗毛の男性三名に『ほんとうに、なにもしないでいいの』と、きょとんとした顔をされてしまった。  この日の夜は、食事にもならず、気落ちした浦和の義父を義兄が支えるように連れ帰って終わったしまった。  朋重もまだ半信半疑のようだが、ちょっと呆れたような笑みを見せてワインを飲み始めた。
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