⑱食べられない!

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⑱食べられない!

 世の中は、自分たちの思い通り。まさにそのように生きてきただろうメリィと母親の紹子。母親は厳つい顔つきで威嚇する険しさを放ち、娘の芽梨衣は我が儘放題に育てられてきたまま子供っぽく恰幅の良い中年女性で、二人揃って邪気を振りまいて意気揚々としていた。  なのに。千歳に会いに来た芽梨衣は、心細そうに震え、やつれきっていた。  またもや本社ビル一階本店に訪ねてきたという。若干の異臭を放っていたため、店長も店頭でいざこざする間もなしと判断をしてくれたのか、すぐに企画室にいる千歳に連絡をしてくれた。  今度は二階にある客室に通すように伝える。  そばにいた伊万里と細野が付き添ってくれることに、さらに祖母にすぐに連絡。朋重にも連絡をすると『父と兄と行く』との返事。浦和水産の本社からすっとんでくるとのことだった。  客室は取引先と打ち合わせをする時に使っている部屋だった。  カフェVIPルーム並みとはいかないが、荻野の客室なので、おいしいお茶が飲めるような空間になっている。インテリアにハイブランドの食器を揃えてビジネスルームにしては少しばかり豪奢に仕立ててある。  大通公園とテレビ塔が見える窓辺を背後に、やつれたメリィがひとりで座っていた。  千歳が入室すると、顔を上げた彼女の頬がこけていることにも気がつく。  あまりの様相に、神様たちに手ひどくやられたことが窺えた。 「いらっしゃいませ。どうかされましたか」  今日はパンツスタイルでスッと現れた千歳を見て、メリィはすかさずテーブルの上にさっと、あの日奪い取って行ったジュエリーケースをふたつ差し出した。 「返します。ごめんなさい」
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