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日替わりパスタとサラダ、スープに、荻野製菓のカフェ限定ミニスイーツがセットになったものだった。
千歳には紅茶を持ってきてくれた。
「これ、食べていいの」
「どうぞ。食べるものにお困りのようでしたから。お一人で心細かったでしょう」
そこでまたメリィがわんわんと泣き叫んだ。もううるさくてうるさくて、千歳も伊万里も耳を塞いだが、細野だけが平然として伊万里の横に立って澄まし顔。
「あんなに悪いことしたのに~。だって、ドロボウみたいに、お嬢さんの家に押しかけたんだよぉぉぉ。こんなすごいジュエリーを無理矢理持って帰ったんだよーーーぉぉお」
千歳もため息を吐く。悪いことだとわかってはいたのだなと。でもママがすべて『悪いことをしても平気。手に入れた者勝ち』という負けナシの連勝人生だったため、自分たちはそれでいいのだという思考に染まってしまったようだ。
それに。食べることに不自由になったのは、まさに福神様からの天罰、いやもしかすると、食を司る神でもある保食神様の怒りだったかもしれない。
「もう、おわかりですよね。食べ物を粗末にしたことを、私の自宅で見ていた神様がいらっしゃったんですよ、きっと」
「お菓子を踏んづけたから?」
「そうです。あと、虫を入れると、お母様が言っておりましたでしょう。あれもです」
彼女が押し黙る。
「ごめんなさい。もうしません」
「温かいうちに、どうぞ。おかわりも遠慮なく」
「う、うう……。いただきます」
久しぶりに出来たての料理を食べるのか、ほんとうにお腹を空かせた子供ががっつくように食べ始めた。
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