⑲最後のご縁

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⑲最後のご縁

「お母様が入院されているとか。ここに来るまでに、細野から聞きました」  手際の良い細野が簡潔に伝え終えてくれていた。  さすがのメリィも食べていた手を止めて、背筋を伸ばして姿勢を正した。  祖母が黙って、静かに静かにメリィを凝視している。彼女の額から汗がダラダラと落ちてくる様が伝わってくる。祖母はそれほどの威圧感がある女傑。きっと彼女の母親以上の畏怖を抱いたに違いない。 「さて、どうしようか。あなた、一人になってしまったようだし」  千歳が報告せずとも、細野の報告でいまの状況を祖母は大方わかっていた。  メリィも畏れ多いやら、不安やらで、またうつむいて青白い顔のまま震えている。  祖母が彼女をじっと見つめているのは、祖母も神様と交信しているのかなと、孫娘は推測する。  その間に、浦和水産の本社から、義父と義兄と朋重が到着した。  客室に入ってきた浦和家の男たちは、すでに着物姿の祖母がいることを知って恐縮した様子で挨拶をする。 「荻野会長、このたびは、こちらの親族が迷惑をかけまして申し訳ありません」 「正貴さん。大丈夫ですよ。婚姻関係を結ぶのですから、すでに当家とも関係あることです。お気になさらずに。こちらの姪御さんと少々お話しをしたいので、お付き合いくださいますか」 「あの、こちらで引き取りたいと思って出向いてきましたので、お祖母様のお手を煩わすわけにはいきません」 「もちろん。浦和のお家で引き受けていただきたいこともあります。秀重君も、朋重君も、勤務中でしたでしょうに、駆けつけてくれてありがとう。お父さんと一緒に、お話しを聞いていただけますか」
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