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荻野製菓の女傑と言われている祖母が言えば、ここではもう誰も逆らえない。義兄も朋重も『わかりました』と静かに答えた。
芽梨衣ひとりを正面に、千歳と祖母と、浦和の義父が並ぶ。千歳の隣に朋重が、義父の隣に秀重が席を取った。
席が落ち着つくと、それでも義父の正貴が腹に据えかねていたのか、芽梨衣に叱責を飛ばした。
「どの顔を下げてこちらに来たんだ。来るなら叔父さんのところに来なさい! お母さんはどうした。千歳さんから奪った真珠はきちんと持ってきたのか!!」
いつもは穏やかなハンサム紳士さんと言いたくなる会長さんなのに、今日は鬼の形相になっていて、千歳も萎縮してしまうほど。
メリィもびくびくしながら、小声で答える。
「持ってきて、ちゃんと返したから……。ママは入院してずっと出てこられない……それで……」
そこでやっと、荻野の義父も『入院?』と怒りの勢いが怯んだ。
その隙間に、祖母はそっと入っていく。
「あのあと、どういうわけか食事が円滑に取ることができない状況が続いて、体調を崩されたようですね。吐血をされたそうです」
祖母の報告に、義父も義兄も吃驚の顔を揃えた。
千歳の隣に座った朋重だけが『もしかして、神様?』とそっと耳打ちをしたので、うんとだけ頷く。彼はもうそんな不思議だと思えることも、落ち着いて受け止められるようになっていた。
浦和の父と兄も『荻野の力が働いた?』と悟っても、本当に不思議な加護があるのだと震えているようにも見えた。
「正貴さん。私と芽梨衣さんだけでお話ししてもよろしいですか」
「はい。お祖母様。お願いいたします」
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