⑲最後のご縁

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 祖母が『リーサルウェポン』だと知ってるからこそ、浦和の義父が退いてくれた。祖母に一任することを浦和の人間として許してくれる。  正面に浦和の親族と、荻野の会長と、物を奪い取った跡取り娘と対峙され、メリィはすっかり意気消沈、怯えきっていた。  そんな子供のような女性に、祖母はやわらかな声で話しかける。 「いま、お母様と離れて心を入れ替えたら、芽梨衣さんはまだまだしあわせになるチャンスがありますよ。このお婆さんが手伝ってあげます」  浦和の義父がいちばん仰天していたが、祖母は目線で制した。  千歳を始め朋重も秀重も、祖母がやろうとしていることに驚きを隠せない。  新たな援助者の登場!? メリィの表情が一気に明るくなり、嬉しそうに顔を上げた。しかも今度の援助者は、有数の製菓会社会長だ。バックアップの力が桁違い。これで安泰と安堵した笑顔だ。 「あの、あの。朋重の従姉、だからってことですか」  母と離れたら、朋重同様の生活が出来るのかという期待の表れだと、千歳には見えた。しかし、そこは祖母が厳しく糾弾する。 「いいえ。そもそも、あなたのお母様と芽梨衣さんは、朋重君のお母様とは血の繋がりがないですよね。当家と婚姻関係を結ぶ朋重君とは血縁としては無関係。それならそれで『血縁ではなくともできる縁の繋げ方』も努力すればあったし、ささやかながらも末永い恩恵も安泰もあったはずです。あなたのお母様は最初から『縁で得た信頼』を構築することもせず、いちいち破壊をして、すっかり壊してしまったんですよ。もったいない。浦和側でも早い時期に縁を切られている。荻野側も繋がるとしても、はっきりいって不利益しかありません。おわかりですよね」
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