⑲最後のご縁

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 気に入らないことがあれば、非情に踏みにじって人を傷つけてきた母・紹子。破壊することで望むものを得る生き方しかできなかった母親。メリィもそれは理解できるのか、また肩を落としてうつむいた。 「ですが。あなたはまだやり直せますよ。いままで一度もしたことがなくても、ここで生まれ変わってください。お仕事を紹介します」  そこでまた浦和の父と兄が『いやいや、ムリムリ』と首を振り父子で顔を見合わせている。朋重はじっと黙って芽梨衣だけを見据えていた。  千歳は、この従姉もある意味被害者、救いようがあるのでは――までの気持ちは持てたものの、どうすれば良いかわからなかった。だからこそ、祖母の采配が気になる。お祖母様はどうするのか。 「これがあなたの人生で最後のチャンスです。また誘惑に負けて、与えた仕事ができなければ、数年であなたもお母様とおなじ人生になります。どこかで行き詰まる。でも、真面目に慎ましい生き方ができたら、そのうちに縁談もくるでしょう。このお婆さんがそこまで見届けてあげます。そのかわり、お母様には二度と会わないように。心細かったり恋しい思いも抱くでしょう。ですが、あなたに良いことはなにひとつ与えない方です。この婆さんとの関係が、芽梨衣さんにとって最後の『ご縁』。ここで切れたらあなたにはなにも残りません。どうですか」 「真面目に働いたら、メリィも結婚、できるの……?」  メリィは戸惑っていた。いままで働いたこともないのは一目瞭然で、母にくっつくまま自由奔放に欲望のまま生きてきたのだから、働くなど苦痛でしかないはずだ。
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