⑲最後のご縁

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 厄介者の姪を引き受けてくれたことに、すかさず浦和の義父が頭を下げてくれる。 「荻野会長、こちら親族の問題でしたのに、ありがとうございました」 「正貴さんもですが、特に奥様は、これまで大変な苦労をされたことでしょうね。心痛お察しいたします」  良き妻で母、社長夫人をつつがなく務めてくれた最愛のパートナー。そんな妻を守り通してきた苦労が、義父が伏せた眼差しに現れていた。 「ですが。この悪縁を持ち運んできた奥様のお父様とそのご親族との縁が切れるかもしれませんが、よろしいですか。まだ奥様のお父様はご存命かと――」 「かまいません。妻が危険だった時にかばってくれなかった父親ですので、とっくに妻は見限っております。息子たちにも祖父として会わせてはいません」 「わかりました。あと、紹子さんはいままでの行いが酷すぎたので、もう……回復は……。あとはその類いの施設に行くだけになります。こちらの負担をお願いできますか」 「もとより援助をしてきましたので、いままでどおりとかわりません」 「姪御さんはこちらで引き受けます。もう浦和の親族には対面はできなくなりますので、ご安心ください」  祖母についている縁結び様からのお達しなのだろう。千歳はそう思った。きっと、浦和の義父もそう思っている。平身低頭、祖母のおっしゃるままで結構ですと覚悟を決められたようだった。
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