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さらに。祖母が千歳と朋重に、なにかを諭すような目線を向けている。
「朋重君のお母様は、ご実家との縁が切れてしまいます。そのぶん、新しく娘となる千歳と、ご子息の朋重君は、そのご実家に代わって、浦和のお母様が安心する日々を過ごせるように大事にしてくださいよ」
これまで傷ついて苦労されてきたお義母様を大事にしろと言われる。
千歳は嫁ではなく婿をもらった立場だが、嫁に行ったつもりで姑を大事にしろと言われているのだ。実子の朋重はいわずもがな。
「これからは、お義母様にも穏やかで、たのしいと思っていただける日々になるよう努力します」
「私も、母のこれまでの苦労の日々を労りたいと考えています」
「うむ、よろしい」
祖母が満足げな笑みを見せた。これで一件落着か。
「はあ。お腹が空いたね。私たちも、なにかいただこうか。千歳、いいかしらね。お祖母ちゃまも久々に『こもれびプレート』食べたいわ。せっかくいらしたから、お義父様とお義兄様、朋重君にもご馳走してさしあげて」
「はい。お祖母ちゃま」
「俺も手伝うよ」
千歳が席を立つと、朋重も一緒に付いてきてくれた。一階本店のカフェにオーダーするだけなのに。
厨房裏口に現れた千歳が栗毛の婚約者同伴で現れたので、従業員たちの視線が釘付けに。でももう彼が夫になるのは決まっていることなので、千歳も臆せずに紹介してしまった。
千歳がよく知っているキラッとした快活な彼に戻って、挨拶をしてくれた。
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