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客室に戻るときも、彼が千歳の手を握って歩いてくれる。
「千歳。お祖母様のこと、お祖母ちゃまって呼ぶんだ。なんだか、ほっとした。まるで主従関係みたいだと思っていたんだけれど。やっぱりお祖母ちゃんとかわいい孫娘なんだね」
「それはそうよ。朋重さんが、ちーちゃんって呼んでくれるのと一緒。家族の前だけね」
「ということは。俺たちはもう家族だから、お嬢様も気を抜いて『お祖母ちゃま』と呼んじゃったってことなんだ」
「うん。じゃあ……。私はこれから『朋くん』って呼ぼうかな。川端さんのおうちで、そう呼ばれているでしょ。私も呼びたい」
『ちーちゃんが、俺のこと朋くん!?』朋重が仰天していたが、元々おない歳同士。これからもっと気兼ねのない関係になりたいと千歳は笑う。
しあわせにおなり。千歳。これからも私と婿殿と荻野を守っていくのだよ。
万民に愛される菓子を守る使命を持って生まれついた長子の定め。
福神様の穏やかな微笑みが見える。
夜には保食神様から『お疲れ様。いつでも遊びにおいで』とのお声をいただいた。
選べない結婚しかできないから、恋は諦めていたけれど。
素敵な恋に出会えたことも、感謝します。
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