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千歳も助手席に乗り込む。朋重も乗り込んでいざ出発。
本日も目指すは石狩。すっかり雪深くなった季節だったが、この日は晴天で、雪に白く輝く街にくっきりと青い空。雪道でも朋重の車は軽快に走行していく。
「はあ~。レストラン浦和で『五杯以上、上限なし』って夢みたいだよぅー」
今日はラフな服装をしている伊万里が、後部座席でひたすらうっとりしている。
それを運転席にいる朋重と、助手席にいる千歳も、顔を見合わせて笑っていた。
「今日は浦和のお義母様も来られるのでしょう」
「うん。ふたりの大食いを初めて見られるってわくわくしていたよ。父と兄と兄嫁さんもだけどさ」
「なんかショーに出る珍獣みたいな気分になってるんだけど、私……。こんな私を見て、浦和のお義父様とお義母様、がっかりしないかな……」
いつになく、しおらしい悩ましさを見せた千歳に、朋重がハンドルを操作しながら大笑い。
「まさか! 神様付きの跡取り娘をいまさら手放すわけないだろ。うちの悪縁をわざわざ懐に呼び込んで、ばっさり切ってくれたんだから。これからの繁栄を考えても、うちの父ちゃんのほうが必死だって。それに千歳と伊万里君の食べっぷりって、如何にも福を呼びそうじゃないか。今日はその『福は内的お食事会』だと、父ちゃんも言っていたから」
「それならいいんだけど……」
「なに姉ちゃん、いまさら気にしてるのさ。もう、レストラン浦和の従業員には、あの大食い男女は『荻野姉弟』ってバレちゃってんだからいまさらじゃん。今日だって、俺たち専用の調理人を押さえてくれるほどの準備をしてくれたのだから。どうせ大食いで色気ないんだからさ。女捨てちゃっていいじゃん」
「なんで食べることで女らしさ捨てなくちゃいけないのよッ!」
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