⑳両家に幸あれ

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 いつもの姉弟喧嘩を繰り広げても、朋重は楽しそうに笑い声を立てている。  朋重と千歳と伊万里でよく行動をするようになった。婚約者同士の婚前同棲中でラブラブな生活をしていても、弟は平気で訪ねてくるし、朋重も歓迎するし、千歳も迎え入れている。  大食い姉弟を携えて、一緒に外食にいくこともある。外食先で大食いリミッターが外れて、姉弟が注目の的になっていても、朋重はまったく意に介さず、微笑ましい様子で見守ってくれるほど。  そんな姉弟、義兄弟の交流を深めているうちに、仕事でも提携をするようになった。  企画室2で、あたらしい『ランチプレートメニュー』を提案。浦和水産の人気商品である『スモークサーモン』を使用したクリームパスタの開発を共同で企画。  荻野製菓本社ビル内にある『テストキッチン』でともに試食をするのだが、その時の姉弟の際限ない試食の数と回数を見て、朋重が改めて絶句。『いや、やっぱり君たち、食の申し子だよ。なるほど、なるほど』と感心されてしまった。  栗毛の婚約者が本社ビルに出入りをするため、『千歳お嬢様の婚約者』という朋重の立ち位置も確立されてきた。  荻野の社員にはならないが、一族の顔でなんなく荻野本社に出入りしている様は、もう既に『お婿さん』の風格を見せていた。  クリスマス近いシーズンになって、『浦和水産コラボ 季節限定こもれびランチプレート スモークサーモンのクリームパスタ』を売り出すと、飛ぶようにオーダーが入り大成功。  千歳と伊万里の父親で社長である『遥万(はるま)』からも、会長である祖母・千草からもお褒めの言葉をいただいてしまった。
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