⑳両家に幸あれ

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 なによりも、婿になる朋重と一緒に仕事ができたことが千歳には嬉しい。弟の伊万里ともビジネスではウマが合うようで、以前から気にしていたスマート漁業の話を、男同士、川端氏まで挟んで盛り上がることも多々あるようだった。  そんな荻野と浦和の連携に、義父の正貴も近頃はほくほく顔でずっと満足そうに笑っているのだとか。  そんなこんなで、三人でわいわいとゆく石狩道。雪が舞う中、浦和水産工場直営のショップとレストランが併設されている『浦和水産 ショップ・いしかり館』に到着。その中にある『レストラン浦和』へ――。ではなく、朋重に店舗の裏側へと案内される。  大きな直営店の裏には事務所があり、そこから二階にあるレストラン浦和の裏方へと案内される。 「ここだよ。ここがうちのショップの特別客室になっているから」  奥には大きな面のガラス窓、その向こうには雪景色の石狩川が見える。  シックな絨毯敷きのフロアに、フレンチレストラン並のエレガントなテーブルと椅子がセッティングされていた。北海道らしく煉瓦造りの暖炉もある。 「おおお。オサレ! ここで今日は上限なし、マジでやっていいのかよ」 「いいよ。あそこにカウンターあるだろ。そこで今日の食事会専属の調理人がすぐに刺身にさばいて丼を作ってくれるから。ほかのメニューもオーダーしていいよ。そばの厨房から運んできてくれるから」 「ほんとに、ほんとにいいの。迷惑にならない?」 「あはは。もう君たちの戦闘能力は把握した。俺、本社で今日の食事会の見積もりきっちり出して、社長の兄貴からも承諾のハンコもらったし、会長の父ちゃん持ちだから大丈夫、大丈夫」
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