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やがて準備が整い、調理カウンターには浦和水産の料理人二名と、配膳スタッフが二名。テーブルにつく家族のそれぞれにアルコールに好みのソフトドリンクが配られる。
今日の食事会の主催は『浦和水産会長』の正貴義父ということになっている。
スーツ姿の義父がグラスを持って音頭をとった。
「今日は私が主催をさせていただきます『荻野家、浦和家、慰労会』となります。もうすぐ年の瀬、新年。少し早い忘年会を兼ねまして、もうじき親族となる二家族で、心ゆくまで浦和水産の料理を堪能していただきたいと思います」
浦和の義父が、テーブルに集まった二家族を、感慨深そうに見渡す。
「このご縁に感謝をして――。また末永く続きますように。来年の初秋に執り行われる朋重と千歳さんの結婚式も楽しみにしたいと思っています。来年も私たち親族と事業に幸がありますように」
『乾杯』。
それぞれのグラスを宙に掲げて、一斉に乾杯を揃えた。
ほっとした義父が、すぐさま目線を向けたのは、千歳と伊万里の荻野姉弟。ちゃっかり調理カウンター付近に席を取った姉弟に優しい笑顔を向けてくれる。
「うちのレストランに来ているという噂のフードファイター並のご姉弟が、まさかの千歳さんと伊万里君だったとは。うちの丼物を気に入ってくれてありがとう。今日は本当に遠慮はいらないよ。いつも五杯止めでセーブしていたんだってね。朋重が言っていたとおりに上限なしだから、思う存分食べていっていいからね」
浦和水産会長直々からのお言葉に、姉弟はもう顔を見合わせ、頬を紅潮させボルテージが上がってくる。
「はい! 俺、マグロづくし丼からの、海鮮ちらし丼、サーモン親子丼からいきまっす」
「私は、私は、サーモン親子丼三連発でお願いします! 浦和さんにきたらサーモン親子丼でしょっ」
いきなり三杯同時オーダーをぶちかます姉弟に、調理カウンターにいる料理人さん二名が仰天していた。
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