5112人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな中、若い彼女が職人を目指して、遠い山陰から単身でやってくることになった。
倉重花南。不思議な雰囲気を持ったその子が来たことで、杏里は思い知ることになるのだ。夫の生き方に――。
坂道を上がりきったそこに、白いカフェが現れる。
そこのドアを開けると、カウンターで出迎えてくれたのは美紗だった。
「お疲れ様。いまからランチ?」
「うん、ランチ。まだある?」
「あるわよ。ま、杏里ちゃんが来ると思って、だいたいワンセット残しているけどね」
「よかった。もうお昼もだいぶ過ぎたから」
蜃気楼が揺れて見える坂の上。そこにミコノスを思わす白と青を基調にしたイタリアンカフェ。美紗はいまここのオーナーになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!