⑥蜃気楼の坂の上

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 そんな中、若い彼女が職人を目指して、遠い山陰から単身でやってくることになった。  倉重花南。不思議な雰囲気を持ったその子が来たことで、杏里は思い知ることになるのだ。夫の生き方に――。  坂道を上がりきったそこに、白いカフェが現れる。  そこのドアを開けると、カウンターで出迎えてくれたのは美紗だった。 「お疲れ様。いまからランチ?」 「うん、ランチ。まだある?」 「あるわよ。ま、杏里ちゃんが来ると思って、だいたいワンセット残しているけどね」 「よかった。もうお昼もだいぶ過ぎたから」  蜃気楼が揺れて見える坂の上。そこにミコノスを思わす白と青を基調にしたイタリアンカフェ。美紗はいまここのオーナーになっていた。
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