⑦1on2

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【 そのかわり、今日のご飯はお魚だよと交換条件にしたんだけど、やっぱブーブー言ってる。でもここは譲らない。今日はホッケのフライにするなー 】 【 たのしみ。いつも、ありがとう。子供たちお願いいたします 】  そう返信する。その様子を見ていた美紗も、ふと口元を緩めて笑っている。 「なに。また優吾がちびっ子に負けて甘やかしているの。ダメね、あいつ」 「正解。でも、よく面倒を見てくれるから」 「優吾もいまがいちばん幸せかもね。あいつも、樹と一緒に苦難の子供時代をくぐり抜けてきているから」  杏里は結婚後、夫とともに、義弟とも同居していた。  入籍後、海辺のマンションでしばし過ごしたが、高台の住宅地に義母が息子夫妻用にと一軒家を新築してくれた。そこに、夫と住んでいたが、いつのまにか義弟が転がり込んできたのだ。  杏里が妊娠をしてなかなか自由がきかなくなった時に、夫が『こいつ、なんでもできるから』と、これまた夫より長身で美麗な長髪男子を連れてきたのだ。  それだけではない。『なんでもいいつけて。自由気ままに過ごしていて仕事もフリーランスだから時間の縛りもない。余っている部屋に待機させるな』  え、え。弟さんが妊婦のサポート? 家事をしてくれる? しかもこの家に住まわせる? 夫以外の男性なのに??  親族顔合わせの席と、結婚式の時に紹介をされていたが、その時以外は接触もなかった。無口なので喋ったこともない。義母の後ろに控えて、全て義母に喋らせてじっとしているだけの弟。だが年齢は杏里とおない歳だった。なんだか近寄りがたいオーラを出していたので、【契約で結婚できる女】みたいに嫌われいてるのかと思っていたのだ。
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