⑦1on2

7/8
前へ
/916ページ
次へ
 もうかわいくてかわいくて仕方がないようで、お父さんはお外でしっかりお仕事をする人だけれど、優吾はおうちにいる優しいパパみたいに子供たちは思っている。  杏里も仕事にスムーズに復帰でき、助かっている。  しかも優吾は探偵業もしているので、なにか困ったことがあると裏方で動いてくれるのも大澤の仕事を助けてくれている。樹も杏里も、とても頼りにしている弟だ。  その優吾がいまいちばん幸せというのは、兄と義姉と、小さな甥っ子たちに囲まれて、家族と一緒に過ごせるようになったからだと美紗は言いたいようだった。  あれから七年経って、いま女ふたりは坂の上のカフェでよく向き合っている。  ここで美紗と他愛もない会話をしていても、杏里はよく思い出している。  杏里は男児二児の母親になっていた。  子供はひとりでいいと思っていたのに、間を置かずに樹に誘われたのだ。『兄弟が必要だろ』と。樹に勧めたのもまたもや美紗で『私はもう恋に振り回されるような若い娘ではない。自分が決めたことだから遠慮はいらない』と説得された。  また夫と愛人がおかしなことを言いだした。跡取りはもう産んだ。杏里はしばらく強固に拒んだが、夫の決意も固く、流されてしまった経緯がある。また、あっという間に妊娠をした。  次子も男児。二歳差の兄弟をもうけることが出来た。  そのころからどうも、おかしいな――と、杏里は気がつき始めた。  なんとなく、二人の熱愛がクールダウンして素っ気なくなっているような……。だが、杏里はふたりの関係はノータッチであったし、垣間見ようという願望も、知りたいという願望もなかった。
/916ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5112人が本棚に入れています
本棚に追加