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「もし、大澤君とどうにかなりたいな~って思う子は、愛人二号になるからね。それも考慮するように。あとね、こちらのお母様、仕事が出来る女性じゃないと嫁として認めないの。お母様自身がビジネスマンだから厳しいわよ。その姑に嫁に来いと請われて大澤家に来たのが、こちらの専務さんで正妻さんね。新規参入する場合は、第三号としてもぜんぜんOKということが条件だからね」
「ちょっと。美紗さん!」
杏里と一緒にいるときは、儚げな愛人のように見えていたから杏里も仰天している。
子犬ちゃんもぽかんとしていた。だが、この子はやっぱり賢いのかな。すぐにおかしそうに笑い出した。
「心得ました。大澤社長にお熱すぎる子にそう言っておきます」
「よろしくね」
「……そうでしたか。知りませんでした」
だからやっぱり店でも言えない。その子には『お姑さんの条件が厳しい』とだけ言っておくと約束してくれた。
できあがったネイルを美紗がしげしげと確認をする。
「う、ん。及第点かな。だってまだプロじゃないもんね。ネイルチップとか作っていないの」
ネイルチップって、あの魔女の爪みたいなやつかなと、杏里はネイルに関してはそれぐらいの関心しかない。
「いま通っているスクールの課題で作ったものと、自分で創作したオリジナルのものです」
「うん、素敵なものいっぱいね! いいんじゃないかな。これから、ネイルの修行一本に絞ったら。サロン開いたら私にまたやってちょうだい」
愛人の美紗に認められたとわかって……。何故か子犬ちゃんが派手な茶髪の中でうつむいてしまった。涙がぽとりと落ちたのがわかる。
「が、がんばります」
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