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「私、どうしようもないシングルマザーの母親から逃げてきたの。あなたも頑張って逃げ切って」
「……はい……」
「応援しているからね。困った時は、この専務にすぐに連絡するといいわよ。ね、いいわよね。杏里さん」
「もちろん……」
だめだ。また樹と美紗に巻き込まれたと、杏里は諦めた。
この後、樹の子犬ちゃん拾いが何度もあって、美紗は黙認したり偶に若い彼女たちの手助けをするようになった。でも最後に、子犬ちゃんたちを『どこでどう据えるか』は杏里の仕事になる。
しかし数年後。その子犬ちゃんたちの恩返しも大澤を助けてくれることに。それでも夫の子犬ちゃん拾いには、杏里はいつも骨を折って立ち回ることになってしまっていた。
そして、七年後、現在。
美紗が坂の上のカフェを持つようになり、夫が久しぶりに拾おうと狙っている子犬ちゃんが、ガラス工房に新しく入ってきた『倉重花南』だった。
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