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やはり狙ったとおりだ。花南は女性ならではの柔らかで華やかなセンスを見せるようになってきた。こういうものは男性職人では滅多に出さない。そういうものだ。女性が見たら心躍る美しいものがなにかわかっている。
その製品を、同じようにガラスが好きな姑がどう評してくれるか知りたく、自宅に持って帰ってみる。
数日に一度、孫の顔見たさに訪ねてくる姑に、倉重花南の作品を見せた。
「まあ、不格好な作品ね」
「まだ思うように表現ができないようですね」
「これ、なんのつもりなの」
テーブルに並べられたのは、七つでワンセットの作品。
杏里もその拙さに惜しい気持ちが止まない。
「マグノリアのキャンドルホルダーだそうです。大小中、それぞれ大きさが違う木蓮の花の中にキャンドルを灯して、部屋の照明をおとすと、幻想的に浮かび上がるというデザインだったようですね」
それを聞くと姑の顔つきが変わった。
「まあ、素敵じゃないの。あー、もうちょっと上手に作れたら、確かに最高だわ」
「あとこのアンティーク調の磨りガラス仕立てな小皿も見てください」
「あら~ほんとうだわ。センスがいいのに、なんて不格好……。はあ……、ともかく技術があればってことなのね」
「センスはいいですよね」
「それが揃う日はいつかしらね。女の子でしょう。途中で結婚するとか言いだして、職人を辞めちゃうんじゃないかしら~」
まあ、そうなる女子がほとんどだと杏里も思う。
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