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「だったら。兄さんとはほんの数回だよね」
「う、うん……」
「兄さんと美紗姉もきっとそうだよ。一颯が生まれた後はまだ残っていたと思う。でも、杏里義姉さんと一緒で、兄さんと美紗姉も、一清が生まれてからはずっと『レス』だったはずだよ」
ヘネシーの香りが、杏里の胸の奥で燃え上がった感覚。青天の霹靂のような衝撃だ。
だったらもう。何年もあのふたりは愛しあっていないと?
杏里の脳裏にまた、日傘を片手に思い詰めた顔で立っていた美紗が浮かぶ。そして、子犬ちゃんを執拗に探し始めた夫の姿もだった。
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