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店を出て行くと、彼が杏里の腰を抱き寄せてきた。
「実は、朝里の温泉宿も予約しているんだ。今夜、どうかな。優吾もわかっているから」
戸惑う必要などもうない。杏里はそっと頷いて了承した。
ニセコから小樽郊外にある朝里温泉へ。
緑に囲まれた庭園のなかにある静かな一軒宿。
このあたりでは有名な高級旅館だった。
樹のことなので、女性が喜びそうな準備も完璧で、また豪華な夕食に、ゆったりとした露天風呂付きの最高の部屋を予約してくれていた。
心の隔たりが取れたから、また夜まで夫婦でゆっくり『結婚記念日』の休暇でくつろいだ。
だが夜が更ければ緊張が高まってくる。
だって。何年ぶりだろうか。夫とその営みを交わす夜は。
しかも、これから長い夫婦の歩みを誓う本当の契りの夜を迎えるのだ。
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