⑲二度目の結婚

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 浴衣を取り払い、杏里から夫の首へと抱きついた。杏里から深く夫の唇を愛して吸う。まるで女が上から覆い被さるように抱きついてきても、樹も怯まず、杏里の身体を支えるように、その大きな手が強く抱き支えてくれる。夫の手がそのまま、妻の柔肌を狂おしく撫でていく。彼の唇が首元にいくつもの強いキスを連ねていく。夫の唇が肌を熱く愛してくれるのを感じながらも、杏里から男を求めるように手を伸ばした。そういう恥じらいもない、妻だからしていいことに今夜の杏里に躊躇いはない。  布団の上に押し倒されると、杏里の裸体を見下ろすように跨いだ樹が、勇ましく自分の浴衣を脱いで肌を露わにした。  そのまま杏里に覆い被さって、耳元から頬から首元へ、そして胸元へと隈無く愛撫を施していく。  繋がる手、硬く結ばれる指と指、重ねる肌と肌の間にはもう空気の隙間はなくて、火照った肌と肌が密着して離れない。  どちらも躊躇いはなかった。そのまま結ばれた。夫と妻だから遠慮もない、心配もない。これは正しい交渉で行為で、愛しあい、だから。  一度目は渇いていた男と女の渇望を吐き出すような交わりだった。  二度目は女の杏里のために樹がじっくり時間をかけて愛してくれた。  三度目はもうどちらも果てに果てていたのに、それでも、求め合って……。  事後の優しい囁き合いなんてなかった。  枯れていた根が綺麗な水を吸い上げて、木肌を通って潤って湿ってしっとりし、瑞々しく葉先までぴんと張っていく。渇きがなくなっていく。なのに、一気に蒸発させて、またしおれる。それほどの勢いで発散した。ふたり一緒に。
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