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おそらく本店店長に早々に配属されたのも、千歳お嬢様の一声『あの人できるから、はやく私の補佐にしたい』というバックアップがあったからだとも噂されている。
もしかして。千歳お嬢様の彼氏なのでは――と、囁かれた時期もあったが、そこはお嬢様かな。いつの間にか親が決めた見合いをして、これまた道内有数の水産会社の次男と婚約成立。さらに『婿入り』させることも決まっているらしい。
そこで小柳店長に好意を寄せても気にしなくていいとわかると、二十代女性、いや……少し歳上の三十代女性も含め、猛アプローチ合戦が勃発。有利なのは、毎日一緒に勤務している『本店スタッフ』たちだ。
柚希と萌子も荻野製菓に同期入社で、しばし郊外の別店舗に配属されていたが、昨年、本店勤務になり再会。それから親しくしている。
そこで萌子は、前の店でも噂になっていた『お嬢様バックアップ付き同期の若き本店店長』と一緒に働けるようになったので、昨年からあの手この手で小柳店長にアタックしていたのだ。
こまめな気遣いを見せて小柳店長に『良い子だな』と感じてもらい、念願叶い、『一度食事でもしませんか』という誘いを彼がやっと受けてくれる。大喜びだった彼女のことを、柚希も一緒に『よかったね』とお祝いして今後の展開が上手く行きますようにと応援をする飲み会までしたのは、つい二ヶ月前のことか。
あれから休暇のデートに食事を何回か重ねてきたはず?
でも恋人になったという報告は、まだもらっていなかった。
「なんでマザコンだと思ったの?」
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