①出世確実店長さん

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 わっぱ弁当の蓋を開け、柚希は父と一緒に作った生姜焼きを箸でつまみながら聞いてみた。 「だって。次の食事は母も一緒でいいですかって言われて」 「え。お母様に紹介してもらえるなら、もう公認にしたいってことじゃないの。結婚前提にしたいから親に会わせるっていう意味の」 「三回目で? 三回目の食事で母も一緒に? まあ食事ぐらいなら『紹介してくれるのかな』と思って受け入れてもいいよ。そのあとのドライブも『食事が終わったら、母も一緒にドライブを』って言いだしたの!」  あ、それはちょっと……と、柚希も苦笑いをこぼした。 「断ったの?」 「やんわりとね。その日は都合が悪くなったとか、次回はふたりでまた会いましょうと回避しようとしたんだけど、また『母も連れて行きます』って言うんだよ。もう限界――」 「なにか、わけがあるんじゃないの?」 「だとしたら、それがずっとつきまとうってことじゃん」 「もしかして小柳店長、母一人子一人家庭?」  萌子が『そうだよ』と素っ気なく答えた。  柚希はそこで反応ができなくなる……。  自分は父子家庭だからだ。違うのは、独立したが柚希には姉がいること。  だから、片親の子供の気持ちがうっすらと透けて見えてしまった。  でも。結婚に条件を掲げる女の子には『母一人子一人』は重くて通用しないのだろうと思って、柚希は口をつぐんだ。 「訳があったんじゃないの。一度、きちんと話あってみたら」 「ううん。もういい。フェードアウトする。次に行くよ」 「次?」  出世確実のエリート候補を諦め、次に狙う結婚相手候補がここに他にいる?  柚希は疑問に思い首を傾げたが、萌子はとんでもないことを言いだした。 「伊万里さんに行こうと思う」 「え!??」  思わず張った声が出た。
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