①出世確実店長さん

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 大和撫子と言いたくなるような黒髪美人のお嬢様と、きりっとした男前の小柳店長が向き合っていると、ほんとうにお似合いのおふたりと言いたくなる見栄えだった。  しかも、いつも親しげで和やかに会話を交わしている。ほんとうは付き合っているのではと噂がたつのも仕方がない。  そこで、ちょうど食事から帰ってきた柚希と萌子を、小柳店長が見つける。 「神楽(かぐら)さん、太田さん。室長が詰め合わせをご希望なので、準備をしてくれるかな」 「はい。店長」  柚希はすぐに答えたが、萌子は不機嫌そうに小さく『はい』と答えただけだった。しかも小柳店長とは目を合わせずに、さっと店頭に向かってしまった。  その些細な様子も、千歳お嬢様は見逃さなかった。 「なにかあったの。太田さんって子だったよね」 「別に。なにも……」  同期生、小柳店長の顔を、千歳お嬢様がじっと窺っている。店長はあからさまに目をそらしていた。 「まあ、いいけど。女性関係は気をつけなよ」 「わかっています。お嬢様」  小柳店長が致し方ない笑みを浮かべ眼差しを伏せる。それを知った千歳お嬢様も、ちょっと心配そうなため息を吐いていた。  だが千歳お嬢様が思わぬことを言い放った。 「わかっていると思うけど。お母様をないがしろにする子はやめておきなよ」  え、お嬢様はマザコン推奨なんですか?  神楽柚希、思わぬ場面に遭遇してしまった気がした。
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