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大和撫子と言いたくなるような黒髪美人のお嬢様と、きりっとした男前の小柳店長が向き合っていると、ほんとうにお似合いのおふたりと言いたくなる見栄えだった。
しかも、いつも親しげで和やかに会話を交わしている。ほんとうは付き合っているのではと噂がたつのも仕方がない。
そこで、ちょうど食事から帰ってきた柚希と萌子を、小柳店長が見つける。
「神楽さん、太田さん。室長が詰め合わせをご希望なので、準備をしてくれるかな」
「はい。店長」
柚希はすぐに答えたが、萌子は不機嫌そうに小さく『はい』と答えただけだった。しかも小柳店長とは目を合わせずに、さっと店頭に向かってしまった。
その些細な様子も、千歳お嬢様は見逃さなかった。
「なにかあったの。太田さんって子だったよね」
「別に。なにも……」
同期生、小柳店長の顔を、千歳お嬢様がじっと窺っている。店長はあからさまに目をそらしていた。
「まあ、いいけど。女性関係は気をつけなよ」
「わかっています。お嬢様」
小柳店長が致し方ない笑みを浮かべ眼差しを伏せる。それを知った千歳お嬢様も、ちょっと心配そうなため息を吐いていた。
だが千歳お嬢様が思わぬことを言い放った。
「わかっていると思うけど。お母様をないがしろにする子はやめておきなよ」
え、お嬢様はマザコン推奨なんですか?
神楽柚希、思わぬ場面に遭遇してしまった気がした。
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