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「わざわざ休暇につきあわなくていいよ。あの畑は許可ある関係者以外は、たとえ従業員でも立ち入り禁止。開発している素材の畑で厳重な警備もされているから、そもそも訪ねる玄関すら辿り着けないからね。俺から荻野室長に言っておく。あちらでうまく避けてくれるよ」
あ、聞かれていたんだ……。柚希はそんな無駄口に付き合っていたことに恥ずかしさを覚える。同時に。さすがやり手の店長、めざとく無駄なことをしているスタッフを見つけて、しかも注意をして気分を害するようなことはせず、萌子が喜ぶやり方で遠ざけてくれた。
でも。萌子失態。めざとい小柳店長が見えないように控えていたのか、無駄口を叩いていた内容が『伊万里主任を狙った婚活計画』。その魂胆も知れてしまい、なおかつ、お姉様に報告されることに……。
「あの、ギフトボックスはほんとうに荻野室長からのご依頼だったんですか」
あまりのタイミングの良さに、柚希は疑ってしまう。
柚希がそこに気がついたので、小柳店長はちょっと困ったように首を傾げたが、優しく笑みながら呟く。
「どうかな。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないね」
あ、わざわざ作らせたんだとわかった。
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