③荻野はやめとけ

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 それでも萌子は『次はどうするかな、もう退社時待ち伏せかな』とかストーカー一歩手前みたいな精神状態で、ぶつぶつ言っている。  小柳店長がたまにちらっとこちらを見ていることに気がつく。さりげなくのはずなのに、今日いまここでは、萌子と目が合ってしまったようだった。 「店長、キモッ。さっさと諦めてよ、もう。デートのセンスは良かったけど、母親同伴お断り。どうりで彼女ができないはずだよねって、他の女の子も同感って言っていたもんね」  どこまで言いふらしているのやら。このあたりも他店舗に勤務している村雨女史に確認しておかねばと柚希は思った。  リーダーのおば様は、どう思っているのだろう。  バックヤードの保管庫にある商品の補充をするように言われて、店頭からバックヤードに下がった時だった。  午後の14時ぐらいだったか。保管庫のストック分の確認を終えて、店頭の商品補充分をトレイに並べて持ち出し、保管庫から出てきたときだった。バックヤードの内線電話が鳴って小柳店長が受話器を取った。 「はい。本店店舗バックヤード、小柳です。……はい、私の、母ですが……」  そう答えたきり、小柳店長の顔が青ざめ言葉を発しなくなった。  受話器を静かに置くと、明らかに動揺している様が見て取れた。ここには柚希しかいない。 「店長? どうかされましたか」  言葉が返ってこない。様子がおかしいので、フロアリーダーのおば様を店頭から呼んでこようと柚希はトレイをいったんPCデスクの上に置いて向かった。だが、おば様も柚希がいつまでも戻ってこないことを気にしたのかバックヤードにはいってきた。 「神楽さん、保管庫の確認終わった? ん? 店長?」
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