③荻野はやめとけ

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 しかも千歳お嬢様、さすがです。入社時から平の販売員から叩き込まれてきたので、小柳店長同様に目端は効くし、テキパキしているし、包装も接客も完璧。これぞ跡取りお嬢様、荻野ですべきことはすべて体験すべきと言われて、市内の全ての店舗や工場勤務まで働かされたことだけあるよと柚希は感動――。  寺嶋リーダーも惚れ惚れしていた。 「はあ、さすが千歳お嬢様。頼もしいわあ。それに、やっぱり同期って大事だね。あれって、戦友だからしゃしゃり出てきちゃったんだよきっと……」  なぜか涙ぐむリーダーおば様。年齢のせいかな? それとも、おふたりが新人のころからあちこちで見てきてご存じだから、お母さん気分なのかな?  だが、その千歳お嬢様がわざわざ出てきてしまったからこそ、本店の二十代女性たちが訝しがる。  その第一声をあげたのも萌子だった。 「ほかの部署の子に聞いたんだけど。小柳店長、お母さんが病院に運ばれたとかで怪我もなかったのに、真っ青になって駆けつけたんだって。業務を放ってだよ。やっぱ、マザコンじゃないこれって」  その口を柚希が止めようとした時には遅かった。  そこにいる若い同世代の女の子たちに、萌子が『実は店長とデートしたことあってさ』とペラペラとプライベートのことまでしゃべり出したのだ。  いまここに寺嶋リーダーはいない。若い女の子たちは萌子に同調して『えーー、なにそれ。マザコンじゃん』とドン引き状態。  柚希は決意する。もう今夜にでも、村雨女史に連絡する!!  千歳お嬢様が同期の小柳店長をさっと助けたように、私も助けられるかな……?
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