④千歳お嬢様は見逃さない

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 さっそく、すべて包み隠さず村雨女史に最近の状況を話した。  彼女も黙って聞いてくれる。時々、静かに相づちを入れて、柚希が話し終わるまで落ち着いて。  話し終えると、村雨女史がひとつ大きなため息を吐いた。  彼女の返答は――。 『放っておきな。そのまま。ユズに責任はないから』 「でも、そばで見ていて放置しているみたいだし、頑張ったら止められるのに止められなかったことになるかも」 『だったら。私がいまここから、ユズは萌子のことを心配して必死で止めようとしていたという証人になるよ。あとはなにかあったら同期には私が根回しするから』 「なにか起きる前になんとかならないかな」 『いや。もう遅いと思う。あのさ、なんのための本店配属だったと思うの。あそこに配属されたら上にいけるか、役に立たないかに振り分けられるんだよ。そこでたとえプライベートで気に入らないことがあっても、将来有望の店長を貶めているだけでアウト。それに、寺嶋リーダーからもマークされているんでしょ。そこでもう終わり。あのおばさん、いまはパートだけど息子が大学に上がったら正社員になる予定なんだよ。きっと次は本店の副店長ぐらいにはなれそうなほど、荻野側から信頼されているんだから。むしろパートだけど、小柳店長の補佐のために本店に配属されたようなもんだから。だから、ユズは、萌子に引きずられて、一緒になって小柳店長を女の子の輪に負けて貶したらダメだよ。そこ線引き気をつけて――』  知らなかった。寺嶋リーダーがそこまでの人だったなんてと柚希は驚きを隠せない。
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