④千歳お嬢様は見逃さない

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「萌子にもそれ知らせた方がいいよね」 『やめな。口が軽すぎる。寺嶋さんが正社員になるとか、ならないとか言いだしたら迷惑がかかる。もう遅いって。ユズは自分の身を守って。あと、ユズがさっき話していた荻野のご加護の話、軽くみないほうがいいよ。長く勤めている人ほど、ほんとうに信じているから。なにか気になること既に起きていない?』 「え、え……。でも、そんな、まさか。でも萌子が行動を起こそうとすると天気が悪くなったり、近づこうとすると伊万里主任が萌子から離れなくちゃいけないことが起きたり……」 『ほらね。それだよ。それ。おばさんたちは、そのちいさなことを何度も目撃していて、ちいさなことをおばちゃんネットワークでかき集めると、やっぱりそうに違いない――という情報量になるんだよ。信じる信じないはともかく、私はその情報はないがしろにしないで、ひとまず信じてみることにしている。だから、近づこうとすればするほど、自分に跳ね返ってくるよ。つまり、萌子は絶対に伊万里主任には近づけないようにできているってこと。ほうっておきな』  まさかの村雨女史まで『荻野のご加護』をまるっと信じているとは思わず、柚希は逆に動揺する。 『ユズ。たぶん萌子はちかいうちに異動になるよ。自業自得だから、気にしない。ユズはできることはやっていたよ。私が聞いたからね』  だからそのままにしておけという女史のアドバイスだった。  柚希もひとまず頷いて、頼りがいある彼女が『証人になる』と言ってくれたことに安心をして通話を終了した。
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