④千歳お嬢様は見逃さない

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 それでいいのかな……。  まだ釈然としないが、ひとつはっきりしたのは村雨女史がいうとおりに『一緒になって店長を貶めないこと』だ。マザコンかもしれないけれど、絶対に一緒になって言わない。そこに気をつけて、できれば萌子にもやめてもらえるよう、もうちょっと頑張ろうと気合をいれなおした。  翌日から、柚希は気持ちを切り替えて仕事に挑む。  村雨女史と話し合ったように『女子の輪に引きずられないように』。  だが意外なことが起きた。 「おはようございます。小柳店長は二、三日お休みとなりますので、このまま代理で私がしばらく店長をさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします」  昨日同様に、制服姿の千歳お嬢様が開店前ミーティングの『朝会』を仕切っていたのだ。  それほどのこと? 怪我はしてないと聞いたが、休むだけのことがあったのかもしれない。柚希がそう思ったように、同世代の女の子たちも眉をひそめつつも、なにも感じ取らなかったような表情を努める。  寺嶋リーダーもなにも感じない顔をしている。つまりこれは『これ以上触れるな』という空気なのだ。  でも空気を読めない女子がひとり。やっぱり萌子。朝会解散してすぐに、萌子は『ママにべったりか』と、柚希にも、このまえ同調してくれた女の子たちにも笑って囁いていたのだ。  もう女の子たちは苦笑いをこぼしたが、あからさまな同調はしなかった。  柚希がそっと千歳お嬢様へと視線を向けると、彼女も明後日の方向へ身体を向けているようで、でも視線は肩越しにこちらに向けていることに気がついてしまった。  ゾッとしている柚希のそばに寺嶋リーダーがさりげなく近づいてきた。
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