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「もう放っておきなさい。遅いから。あなたはあなたがすべきことを淡々とこなしなさい。わかったわね」
「は、はい……」
手遅れか。萌子はもう包囲されているようだった。
小柳店長が仕切っているときは『おおらかに、安心に包まれていた』とつくづく感じた。
千歳お嬢様が店長代理をしていると、ものすごい緊迫感に包まれる。
もう彼女がそこに立っているだけで、キビキビ気を抜けない。
やっぱり荻野の跡取り娘。威圧感が違う、威厳が違う。それはもう、彼女のお祖母様、荻野会長とおなじ風格を既に備えていた。
こうなってくると、小柳店長が女性を気にして柔らかに統率していたことがよくわかる。
さすがの萌子も初日に軽口を叩いて以降は、なにかを感じたのか大人しく業務に徹していた。
それに何故か、萌子と柚希はおなじ時間帯の昼休みに入れなくなった。
つまり、千歳お嬢様と寺嶋リーダーの意向で、萌子とバディのようにセットで行動させていた状態をやめさせ、別々の行動をさせるように動かされ始めたことに気がついた。
今度は萌子と一緒になった後輩の女の子が恋バナの餌食になっていないといいけれど……と柚希は案じている。
その日の昼過ぎ、ランチ入り後半チームに入っていた柚希のところに、萌子と昼休み前半チームに入っていた後輩ちゃんがそっと近づいてきた。
「神楽さん、太田さんって、いつもあんなかんじだったんですかあ」
ちょっと疲れた顔をしていたので、予想通りだったかと柚希は苦笑いをこぼす。
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